【2025最新】東京の創業助成事業(令和7年度第2回)を徹底解説

東京都が実施する**「創業助成事業」令和7年度第2回の募集が発表されました。これは、創業5年未満の中小企業や東京都内で創業予定の方を対象に、創業初期に必要な経費の一部を東京都が助成してくれる制度です。最大400万円(経費の2/3以内)の助成金を受け取れるチャンスがありますが、その採択率は10〜15%程度と高い競争率であり、戦略的な準備が必要です。本記事では、この創業助成事業の制度の全体像やメリット、申請条件、必要書類、対象経費などをわかりやすくまとめ、さらに採択されるためのポイントや戦略**についても解説します。創業助成金への申請を真剣にお考えの方が、自社にとってこの制度を最大限に活用できるよう、ぜひ参考にしてください。

目次

創業助成事業とは?制度概要とメリット

東京都の創業助成事業は、東京都及び(公財)東京都中小企業振興公社が連携して実施する創業支援策です。東京都内の開業率向上を目的としており、東京都内で新たに創業する予定の個人創業から5年未満の中小企業者等に対し、創業初期に必要な経費の一部を助成するものです。この助成金を活用することで、創業間もない企業が資金面の不安を軽減し、事業を軌道に乗せる支援を受けることができます。

最大のメリットは、経費の2/3以内(上限400万円)を東京都が負担してくれる点です。自己資金だけでは賄いきれない初期コスト(オフィス賃料や広告宣伝費など)について、公的資金で補填してもらえるため、キャッシュフローに余裕が生まれます。また、助成対象期間は交付決定日(採択後)から最長2年間と長めに設定されており、計画的に資金を活用できる点も魅力です。期間途中の6か月経過後には中間払い(一部先行支給)も可能なので、立て替え負担の軽減も図れます。さらに、本助成金に採択されると東京都や公社からの信頼性も高まり、対外的な信用力アップや追加の資金調達にも良い影響を与えるでしょう。

助成対象経費には、創業初期に発生しやすい様々な項目が含まれています。具体的には**「賃借料」「広告費」「器具備品購入費」「産業財産権出願・導入費」「専門家指導費」「従業員人件費」「市場調査・分析費」**の7カテゴリーです。これらは後ほど詳しく解説しますが、オフィスや店舗の家賃、人件費、販促費用から特許出願費用まで幅広くカバーされており、創業時にボトルネックとなりやすい経費を手厚く支援してくれる内容になっています。

なお、本助成金は公募期間内に申請し、書類審査・面接審査を経て採択された企業のみが受給できます。当然ながら誰でも自動的にもらえるものではなく、ビジネスプランの競争に勝ち抜く必要があります。しかしそのプロセス自体が事業計画を見直す良い機会ともなります。採択に至らなくても、事業計画の精度向上や他支援策へのステップにもなり得ますので、意欲あるスタートアップにとって挑戦する価値の高い制度と言えます。

募集概要(令和7年度第2回)


今回の令和7年度第2回募集のスケジュールは以下の通りです

以上が大まかなスケジュールです。申請準備から交付決定まで半年以上のプロセスとなるため、計画的に取り組むことが重要です。特にオンライン申請(jGrants)の操作や必要書類の電子化など、初めての方は早めに準備しておきましょう。不明点があれば事務局やサポート窓口に問い合わせるなどして、締切直前に慌てないようにしてください。

助成対象経費と助成内容の詳細

創業助成事業で補助対象となる経費は、冒頭で触れた通り7つのカテゴリーに分類されています。ここでは各カテゴリーの具体的な内容と注意点を解説します。

  1. 賃借料 
    – 東京都内で事業用に使用するオフィス・店舗・駐車場等の家賃や共益費が対象です。たとえば事務所や店舗の賃料、シェアオフィスやコワーキングスペースの利用料(東京都内に限る)も含まれます。業務用レンタルサーバー料なども賃借料に区分されます。
    ※注意:賃貸契約時の敷金・礼金・保証金・仲介手数料・更新料等は対象外です。また、自宅兼事務所で区分が曖昧な場合や、親族所有の不動産を借りる場合、バーチャルオフィスの利用料なども助成対象になりません。契約開始が交付決定日より前でも継続利用していれば助成対象になりますが、支払い自体は助成期間内の分のみが対象です。
  2. 広告費
     – 事業のPRに要する広告宣伝費が該当します。具体例としては、Webサイト制作費(商品・サービスPR目的)、パンフレット・チラシ作成費、広告デザイン費、オンライン広告出稿費、イベント出展費などが挙げられます。創業期の販促活動に必要な費用を幅広くカバーします。
    ※注意:自社商品の販売原価や試供品作成費、接待交際費のような広告とは言えない費用は含まれません。また、公序良俗に反する内容の広告費も当然認められません。
  3. 器具備品購入費
     – 事業遂行に必要な器具や設備、備品の購入費用です。パソコン、プリンター等の事務機器、製品製造に使う機械装置、店舗の什器・内装備品、業務用車両(必要性が認められる場合)などが想定されます。基本的に資産計上できるような耐久消費財が対象です。消耗品や在庫商品仕入れは対象外です。
    ※注意:中古品の購入も対象にはなりますが、オークション等での個人取引で証憑が不十分な場合などは認められない可能性があります。また、事業と無関係な高級備品や過剰な設備は経費として認められません。親族や関係会社からの購入は助成対象外となります。購入した備品は助成事業者の所有物となる必要があります。
  4. 産業財産権出願・導入費
     – 特許権・実用新案・意匠・商標など知的財産の出願に要する費用や、他社特許のライセンス導入費用等が該当します。具体的には、特許庁へ支払う出願料・登録料、弁理士など専門家への依頼費用が含まれます。革新的な技術やブランドを守るためのコストも支援されます。
    ※注意:出願に直接関係ない調査費用や、権利維持年金の支払いは対象外となる場合があります。
  5. 専門家指導費
     – 創業初期の事業遂行に必要な専門家からの助言指導に要する費用です。例えば、経営コンサルタントによる事業戦略指導、デザインの専門家からの商品開発アドバイス、IT専門家からのシステム導入指導、法律・会計の専門家への相談料などが考えられます。自社に不足する知見を補うために外部専門家を活用する費用が幅広く対象です。
    ※注意:日常的な税務顧問料や社会保険労務士への手続き依頼料など、創業支援と直結しない通常業務の委託費は認められない可能性があります。また、専門家が自社の役員や株主と関係がある場合も対象外です。助成対象期間中に実際に指導が行われ、支払いが完了した費用のみが対象となります。
  6. 従業員人件費 – 助成事業者と直接の雇用契約を結んだ従業員に支払う給与・賃金が対象です。正社員の基本給、パート・アルバイトの時給などが含まれ、交付決定日より前に雇用していた従業員の給与も助成期間中の支払い分であれば対象となります。
    ※注意:創業者本人や役員の給与は含まれません。また、個人事業主の場合は生計を一にする家族(親族)への給与は対象外です。助成対象となる給与には上限が設けられており、賞与を含め月額35万円が上限(35万円を超える場合は35万円まで)、パート等の賃金は日額8,000円が上限となります。これら上限額を超える支給をしても、その超過分は助成対象外となる点に注意してください。また、助成対象期間前に支払った給与や、期間終了後に支払われる給与も助成の対象にはなりません。
  7. 市場調査・分析費 – 事業計画に必要な市場リサーチやデータ分析を外部へ委託して実施する費用です。具体例として、市場動向や顧客ニーズに関する調査の委託費、専門調査会社からの業界レポート購入費などが該当します。自社で賄えない本格的な調査を行う場合に役立てることができます。
    ※注意:自社内で行う調査活動にかかる人件費や旅費は対象外です。また、調査結果を事業に活かす意思が不明確な場合(とりあえず調査してみる程度では)、採択審査で不利になる可能性があります。費用対効果が見込める有益な調査を計画しましょう。なお、市場調査・分析費は「委託費」に分類され、助成金額の上限は100万円まで(経費の2/3以内)と決められています。

以上が助成対象となる費用の概要です。助成額について改めて整理すると、事業費(賃借料・広告費・器具備品・産業財産権・専門家指導)と人件費の合計に対し最大300万円、委託費(市場調査)の部分に最大100万円が助成され、両者を合わせた総額の上限が400万円となります。助成率はいずれも経費の3分の2以内で、自己負担は3分の1以上必要です。申請にあたっては必ず「事業費」に該当する経費を含める必要があり、人件費や市場調査費だけの申請は認められません。計画を立てる際は、事業の成長に直結する経費をバランスよく組み込みつつ、上限額と助成率を踏まえて予算配分してください。

申請対象者と応募要件

それでは、誰が創業助成事業に応募できるのか、その応募資格・申請要件を確認していきましょう。創業助成事業に申請するためには、公募要項で定められた**「申請要件1〜4」すべて**を満たす必要がありますstartup-station.jp。主なポイントを項目ごとに整理します。

申請要件1:対象となる創業者の範囲

申請要件1では、「創業者等」の定義や事業形態に関する条件が示されています。簡潔に言えば、東京都内で事業を営む予定または営んでいる創業5年未満の中小企業者等であることが必要です。具体的には以下のようなケースが該当します。

上記のいずれかに該当すれば「創業者等」として応募可能ですが、以下の場合は申請できません

申請要件2:創業支援事業の利用実績

【申請要件2】がこの助成金特有のハードルと言えるでしょう。応募者は、申請までに東京都または公社等が指定する創業支援事業を利用し、所定の証明書等を取得していることが求められます。裏を返せば、「何らかの事前支援を受けて創業準備や事業計画のブラッシュアップを行った人でないと応募できない」ということです。

該当する創業支援事業は全部で20種類あり、例えば以下のようなものがあります。

このように要件2は種類が多岐にわたりますが、応募者は上記のうちいずれか一つにでも該当し、その証明資料を提出できなければなりません。証明資料とは具体的に、各プログラム修了時にもらえる修了証・受講証明書・融資利用証明書等です。例えばプランコンサルティングであれば修了証、創業融資なら金融機関発行の融資実行証明書、インキュベーション施設なら入居証明書といった具合です。

創業助成事業の申請要件満たすためには、事前にいずれかの創業支援プログラムを利用し証明書を取得する必要があります。また、その準備には2ヶ月以上を要するのが一般的で、申請期間に入ってからでは間に合わないため注意が必要です。

※上図:申請までに創業支援事業を利用し要件を満たす必要があることを示す公社サイトの図解。赤字で「要件を満たすには概ね2か月以上かかります。申請期間後の提出は認められません」と強調されている通り、要件2の充足には時間を要するため早めの行動が必須です。

要件2への対策:まだ上記のいずれのプログラムも利用していない方は、公募開始までに時間がある今から早速動きましょう。特にTOKYO創業ステーションの**「プランコンサルティング」**は随時受付されていますので、申し込みを検討してください(利用には事前にTOKYO創業ステーションへのメンバー登録が必要です)。プランコンサルティングは約3か月かけて事業計画を磨くプログラムであり、修了までに一定の期間がかかります。要件2クリアだけでなく、審査で評価される事業計画の質も高められるため一石二鳥です。また、既に終了した起業セミナー等でも、過去3年以内であれば証明書が有効なケースがあります。自分が過去に参加したプログラムが該当するか、不明な場合は事務局に問い合わせて確認しましょう。要件2は書類審査(形式審査)で真っ先にチェックされるポイントですので、未充足の場合は応募そのものが認められません。絶対に漏れのないよう準備してください。

申請要件3:事業計画の実現可能性と継続性

申請要件3では、申請する事業計画自体の要件が定められています。主な内容は、「その事業が助成対象期間内にしっかり実施でき、かつ助成期間終了後も継続して事業活動を行える見込みがあること」です。これは審査上も重要視されるポイントであり、単発の計画で終わらず持続的に成長するビジネスであることを示す必要があります。

申請要件4:法令順守・資質等に関する事項

申請要件4は、主に申請者の法令順守状況や公的助成を受ける適格性に関する要件です。以下のポイントをすべて満たす必要があります。

以上、応募資格に関わる要件1〜4を見てきました。まとめると、「東京都内で創業して間もない中小企業者であり、所定の創業支援プログラムを事前に受け、綿密な事業計画と継続意欲を持ち、税務・法務面でもきちんとした方」が応募対象となります。要件を一読するとハードルが高く感じられるかもしれませんが、これは本気で事業成長に取り組む創業者を選抜するためのフィルタと捉えましょう。実際、要件2のプログラム受講等は自社の成長にも役立つものですし、要件3・4で問われる姿勢や体制は、企業経営者として当然備えるべき資質です。要件に満たない部分がある方は、逆にこの機会に条件をクリアすることで自社の創業基盤を強化するきっかけにしてください。

申請準備:必要書類と申請書のポイント

実際に創業助成事業へ応募するためには、指定の申請書類一式を期限までに揃えてオンライン提出する必要があります。ここでは、提出が求められる主な書類と作成時のポイントを紹介します。

提出が必要な書類一覧

  1. 申請書(交付申請書)および事業計画書 – 所定様式の申請書フォームです。事業計画書のフォーマットも含まれており、自社の事業概要や計画を詳細に記入します。令和7年度第2回用の最新様式は公式サイトからダウンロード可能です。この事業計画書部分は審査の根幹資料となるため、後述のポイントを踏まえて丁寧に作り込みましょう。
  2. 創業支援事業の利用証明書 – 前述の申請要件2を証明する書類です。受講・利用した各プログラムごとに様式が異なりますが、例としてプランコンサルティング修了証、融資利用証明書、インキュベーション施設利用証明書、事業可能性評価結果通知書などがこれに該当します。自分が該当する証明書を漏れなく用意してください。
  3. 法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)または個人事業の開業届 – 応募時における事業形態を証明する書類です。法人の場合は発行3か月以内の登記簿謄本原本が必要です。個人事業主の場合は税務署受付印のある「個人事業の開業・廃業等届出書」の写しを提出します。これは本店所在地や開業日、事業開始からの年数などの確認に使われます。法人設立前で個人として応募する場合は、その旨申請書に記載すれば応募可能ですが、採択後の交付決定時までに法人化する場合は改めて登記簿謄本を提出することになります。
  4. 納税証明書 – 東京都内で納税していること、および都税・住民税の滞納がないことを示す証明書です。具体的には、法人であれば「法人事業税納税証明書」「法人都民税納税証明書」を取得し提出します(設立初年度等で発行できない場合を除く)。個人事業主で事業税未発生の場合は「住民税納税証明書」あるいは「非課税証明書」、事業税課税がある場合は「個人事業税納税証明書」と住民税の証明書を両方提出します。創業予定の個人も、現時点で住民税の納税証明書等を用意します。いずれの場合も直近年度分の証明書が必要です。
  5. その他の書類 – 上記以外にも、公募要項で細かく指定された書類があります。例えば、会社概要のパンフレット(任意)、直近年度の決算書類(創業済み企業の場合)、役員名簿、株主リスト等を求められることがあります。また、該当者のみ提出の書類として、既に助成金を受けたことがある場合の報告書コピー、外国人起業家の場合の在留カード写しなども該当することがあります。募集要項の「提出書類一覧」を必ず確認し、自社に必要なものを漏れなく揃えましょう。

書類不備は致命的! 提出すべき書類が一つでも欠けていたり、内容に不備があると、それだけで書類審査(形式審査)で不通過となってしまいます。締切直前に慌てて用意しようとしても、役所発行の証明書取得には時間がかかる場合があります。最低でも募集開始の数週間前までに必要書類の入手計画を立て、余裕をもって準備することが肝要です。また、電子申請では全てPDF等にスキャンしたデータで提出するため、スキャナーの用意やデータ化の手間も考慮しておきましょう。提出前には全書類が揃っているか、PDFがきちんと表示できるか(文字化けや破損がないか)も確認してください。

電子申請(jGrants)準備

前述の通り、今回から申請はjGrants上でのオンライン受付のみとなります。jGrantsを利用するにはGビズIDプライムの取得が必要で、申請から発行までに2〜3週間程度かかります。まだ取得していない場合は早急に申請しましょう(GビズIDヘルプデスク等でサポートも行っています)。電子申請では、申請者本人のアカウントから手続きを行う必要があります。法人の場合は法人IDでログインし、個人事業主の場合は個人名義のIDで申請してください。
申請期間が始まるとjGrants上に本事業専用の申請フォームが公開されます。そこで基本情報の入力と前述の書類データのアップロードを行い、送信すると申請完了です。紙書類の郵送は不要ですが、オンラインならではの注意点もあります。ファイルは一つずつアップロードし、ZIP圧縮はせず個別のPDFで提出してください。データ量が大きいと時間がかかるので、可能なら事前にファイルサイズを軽減する工夫も必要です。締切間際は回線混雑等でトラブルも起こりえますので、できれば締切日の前日までには送信を完了させておくのがおすすめです。

審査の流れと選考ポイント

提出が完了すると、いよいよ書類審査・面接審査による選考が行われます。本助成事業の審査は大きく以下のステップで進みます。

図: 創業助成事業の申請から助成金受領までの流れ(申請書類作成→申請提出→書類審査面接審査→交付決定(採択)→事業実施→完了報告→助成金支払)

以上が一連の流れです。かなり長丁場ですが、その分採択されれば得られるもの(資金+α)は大きいと言えるでしょう。では、この厳しい競争を勝ち抜くためにどんなポイントが審査で見られるのか、そしてどのように事業計画を作れば採択率を高められるのかを次章で考えてみます。

過去の採択状況と競争

まず押さえておきたいのは、この助成金の倍率(競争率)の高さです。過去の応募・採択件数の推移を見てみましょう。

年度ごとの具体的な実績を見ると、平成30年度は申請600件に対し採択151件、令和4年度は申請1210件に対し採択162件、令和5年度は申請1060件に対し採択157件などとなっています。概ね10人応募して1〜2人が受かる計算で、採択率はおおむね10〜15%前後です。年度によって若干上下しますが、常に定員オーバーの人気ぶりであり、かなり狭き門であることは間違いありません。

過去の傾向として、東京オリンピック前年の令和2〜4年度あたりで応募者が増加しピークに達しました。その後はコロナ禍を経てやや減少傾向も見られますが、それでも毎回1,000件前後の応募があります。東京都としても予算の範囲でできる限り多く採択枠を設けており、令和6年度(2024年度)は年間で計208件(第1回108件+第2回100件)が採択されています。採択枠が増えた年もありますが、その分応募も増えるため、基本的に競争率が緩和されることは期待しない方が良いでしょう。

このような競争率の高さを踏まえると、「条件を満たして応募すれば当たるかも」という宝くじ的な発想ではなく、いかに自社の計画を洗練させ、他社より高く評価してもらうかが重要になります。実際、審査委員は多数の応募計画書に目を通す中で、将来性・地域貢献性の高いビジネス熱意と準備が伝わる申請を選び抜いています。では、具体的に審査ではどんな観点で評価が行われ、採択者は何が優れているのでしょうか?次の章でその点を探ります。

採択されるための戦略とアドバイス

競争率10%台という狭き門を突破するには、綿密な戦略と準備が欠かせません。ここでは、過去の公募要項や審査講評から推察される審査の観点を整理し、採択に近づくためのポイントをアドバイスします。

① 明確な事業コンセプトと社会的意義

まず重要なのは、事業の目的・ビジョンが明確で、社会的課題の解決や新たな価値創出につながる内容かという点です。審査では「その創業によってどんな課題を解決しようとしているのか」「なぜそれを自分がやる意義があるのか」を重視します。単に「儲かりそうだから」ではなく、社会や地域にポジティブなインパクトを与える使命感や問題意識をアピールしましょう。例えば、「高齢者の移動を支援する新サービスで地域課題を解決したい」「環境負荷の少ない製品で業界を変革したい」など、ビジョンがはっきりしている起業は共感と評価を得やすいです。また、自社の経営理念や将来ビジョンも言語化し、計画書に盛り込みます。審査員に「このチームなら志を持ってやり遂げそうだ」と思わせることが大切です。

② 創業チームの強みと弱みの把握

次に、創業メンバー(特に代表者)の能力や経験が事業内容に活かされているかが見られます。自分たちの強み(技術力・業界経験・人脈など)をきちんと把握し、それが計画実現にどう寄与するかを示しましょう。例えば、「代表は〇〇業界で10年勤務し市場を熟知」「CTOはAI開発の専門家で技術優位性がある」など具体的にアピールします。その一方で、弱みやリスクも正直に認識しているかが重要です。創業時には人手不足や資金不足、知名度ゼロなど様々な課題がありますが、それらに対して「どのように補強・解決する計画か」まで触れておくと良いでしょう。例えば、「営業力が弱いので専門の顧問を迎える予定」「技術開発のリスクは助成期間中にプロトタイプ検証を行い低減させる」等です。自社の SWOT 分析をした上で、弱点への手当も講じている計画は信頼感を与えます。

③ 市場ニーズの理解と差別化戦略

ターゲット市場・顧客の分析も評価の要です。あなたの事業の想定顧客は誰で、どんなニーズを持っているのかを明確にしましょう。年齢層・性別・地域・利用シーンなど具体的なペルソナを描くと説得力が増します。また、その顧客層における市場規模や成長性のデータも示せるとベターです。「国内で〇万人の潜在顧客、市場規模〇億円、年△%で成長中」など客観データがあると計画の実現可能性が高く見えます。

そして忘れてならないのが競合との差別化ポイントです。既に類似サービスや製品がある場合、なぜ自社が勝てるのか、何が優れているのかを論理立てて説明しましょう。価格競争なのか、品質なのか、独自技術なのか、ターゲット層が違うのか等、明確にします。競合調査を怠っていると「既存○○社と何が違うのですか?」という質問で詰まってしまいますので注意です。逆に、競合が少ないブルーオーシャンならその旨を示しつつ、市場参入障壁や後発組への対策についても触れておくと良いでしょう。

④ ビジネスモデルの実現性

収益を上げる仕組み(ビジネスモデル)の妥当性は審査の核心部分です。助成期間中〜終了後にどうやって売上を立て、利益を出していくのか、そのシナリオを具体的に描きます。主要な収入源は何で、どのくらい売れれば損益分岐点を超えるのか、数値計画を示しましょう。例えば、「月額サブスク料金×契約社数」で収益モデルを説明したり、「初年度○○件販売で黒字転換」といった目標値を入れます。あわせて販売戦略も重要です。どのように顧客を獲得するのか(オンライン広告、代理店営業、展示会出展など)、チャネル戦略・マーケティング戦略を具体的に記載します。製造業であれば**供給体制(製造・仕入れルート)**もチェックされます。「製品を安定的に製造できるのか」「外注先や量産体制は確保済みか」といった点です。ここが曖昧だと「そもそも作れないのでは?」と不安視されてしまいます。仕入先や生産工程、知的財産の確保状況なども記載しておきましょう。

さらに、潜在リスクとその対策についても触れておくと丁寧です。例えば「新規技術なので法規制リスクがある→専門家に確認し対応予定」「為替変動で仕入価格変動の恐れ→価格転嫁策を準備」などです。自社の計画に潜むリスクに自覚的であり、あらかじめ備えている姿勢は高評価につながります。

⑤ 助成金の使途と効果の明確さ

審査員は、「この会社に助成金を出したら有効に使って事業が伸びるだろうか?」という視点でも見ています。したがって、助成金の使い道(使途)を具体的に示し、その効果をアピールすることが肝要です。事業計画書内の「助成金の活用方法」欄には、申請する各経費を何に使い、どう事業拡大につながるかを書きましょう。例えば「広告費◯◯万円:新サービス認知度向上のためSNS広告実施、見込み客◯人獲得予定」「器具備品費◯◯万円:生産設備購入に充当、製造キャパシティ2倍に拡大」など、助成により得られる具体的な効果(KPI)が伝わると良いです。

注意したいのは、助成金に依存しすぎない計画にすることです。公募要項でも「助成金の交付がない場合でも事業継続が可能な収支計画であるか」が問われています。つまり、最悪助成金がもらえなくても自己資金や融資でやり遂げる覚悟・計画はあるか?という点です。助成金はあくまで成長を加速させるブースターと位置付け、「無くても走れるが、有ればより早く遠くへ行ける」というスタンスが理想です。そのためにも、自己資金や追加資金調達の計画も盛り込んでおきましょう。例えば「自己資金○○万円を投下済み、さらに金融機関から融資内諾○○万円あり、本助成金と合わせて事業推進」「助成がなくともこの融資で最低限計画を実行する」などです。財務基盤の安定性を示すことで、助成金の使い道も安心して任せてもらえるでしょう。

⑥ 計画数字の整合性と説得力

最後に、事業計画の数値面の整合性にも注意しましょう。審査員は計画書内の売上予測・利益計画と、申請経費の内容や採算がきちんと連動しているかを細かく見ています。例えば大々的な広告投資を計上しているなら、その結果どの程度集客・売上増を見込んでいるのか、売上計画とリンクさせます。また、設備投資をするなら減価償却費の扱いや維持費も織り込むべきですし、人件費助成を受けるなら従業員を何名増やし生産性がどう向上するかも説明できると良いでしょう。数字同士に矛盾がないか(例:販売単価1000円で1万件売る計画なのに売上高に1億ではなく1000万と書いてしまっている等)チェックするのは基本中の基本です。第三者にも見てもらい、ロジックと数字に飛躍がないか事前に確認することをおすすめします。

また、計画数字には根拠が求められます。可能な範囲で根拠データや試算根拠を注記しましょう。例えば「WEB広告◯万円で◯%のCTR、◯%のCVRと仮定し◯件顧客獲得」といったように、計画の前提条件を示します。根拠なく「1年目1億円売上」では信憑性に欠けますので、市場規模や営業体制から見積もった現実的な数字に落とし込むことが大切です。

以上、採択に向けた事業計画作成のポイントを挙げました。まとめると、「何を・誰に・どうやって・いくらで・どのくらい売って・どう成長させ・リスクに備えるか」を筋道立てて示し、助成金が加わることで一層効果的に事業が伸びる姿を描ければベストです。審査員は計画書と面接でそれを見極め、「この事業は育てる価値がある」と判断すればあなたの会社を採択してくれるでしょう。

+アルファのアドバイス

最後にいくつか実践的なアドバイスを付け加えます。

諦めず次回以降もチャレンジ:もし残念ながら不採択となっても、一度で諦める必要はありません。創業助成事業は毎年2回程度募集があります。実際に再挑戦で採択を勝ち取った企業も少なくありません。審査員コメント等のフィードバックは個別には貰えませんが、自分なりに計画を見直し改善して、次回募集に備えましょう。ただし要件2の証明等は有効期限がありますので、その点だけ留意してください。

公社の相談サービスを活用する:TOKYO創業ステーションでは事業計画のブラッシュアップ相談や専門家によるアドバイスを受けられます。前述のプランコンサルティングに限らず、ビジネスコンシェルジュによる個別相談(無料)も随時受け付けています。第三者の視点で計画をチェックしてもらうことで、抜け漏れや改善点に気付けるでしょう。特に初めてこうした申請をする方は公社に遠慮なく相談してみることをおすすめします。

過去の採択事例を研究する:公社サイトでは過去の採択結果一覧や採択企業の事例集が公開されています。どのような事業分野・企業が採択されているかを見ることで、傾向を掴めます。また事例集「わたしの創業ものがたり」では採択企業の創業ストーリーが紹介されており、申請書づくりのヒントや心構えが得られるでしょう。

同時期に他制度も検討する:創業助成金は競争が激しいため、万一漏れた場合の代替策も視野に入れておきましょう。例えば、日本政策金融公庫の新創業融資、各区市町村の創業補助金、民間主催のビジネスコンテスト等です。本助成金と併願可能な制度もあります(ただし結果が両方通った場合はどちらか辞退要件など注意)。資金調達手段を複線化しておくことで、助成金が取れなかった場合のリスクヘッジになります。

おわりに:創業助成事業への応募をお考えの方へ

東京都の創業助成事業は、スタートアップにとって資金と信用力を得る絶好のチャンスですが、その反面しっかりとした準備と計画が求められる競争型の助成金です。採択率10〜15%という数字は決して簡単ではありませんが、裏を返せば毎年100社以上の新しい企業がこの助成金を勝ち取って飛躍しているということでもあります。本記事でご紹介した制度のポイントや計画策定のコツを参考に、ぜひ貴社のビジネスプランを磨き上げてください。

創業5年未満」という限られた時期にしか挑戦できない貴重な機会です。条件さえ満たせばチャレンジする価値は大いにあります。助成金400万円は単なるお金以上に、東京都からのお墨付きという信用をもたらし、その後の事業拡大や他の支援獲得にもプラスになります。採択に向けては大変な労力を要しますが、その過程で得られる気づきやプラン洗練の効果は何物にも代えがたい財産となるでしょう。

「ぜひ応募したいが、自社だけで準備できるか不安…」という方へ: 東京都中小企業振興公社やTOKYO創業ステーションでは、創業助成金の申請に関する質問や相談にも対応しています。疑問点があれば早めに問い合わせ、専門の支援を受けることをおすすめします。以下に問い合わせ先を記載しますので、ご活用ください。

<創業助成事業に関するお問い合わせ先>
(公財)東京都中小企業振興公社 事業戦略部 創業支援課 創業助成担当
TEL: 03-5220-1142 (平日10時〜17時)
※または公社Webサイトのお問い合わせフォームから送信できます。

貴社のご成功を心よりお祈りしております。熱意ある起業家の皆様が、この創業助成事業を足がかりに事業を飛躍させ、東京発の新たなビジネスストーリーを紡いでいくことを期待しています! ぜひ戦略的に準備を進め、創業助成事業への応募に挑戦してみてください。あなたの挑戦が、次の未来を切り拓く第一歩になるかもしれません。

ぜひお気軽に私たちTRUSTEP JAPAN株式会社へお問い合わせください。

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皆さまとお話しできる日を心よりお待ちしております。

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