建設業界には人手不足や生産性の低さなど、構造的な課題が存在しています。
また、建設現場は常に危険と隣り合わせであり、どれだけ注意していても人間が関わる以上事故を0にするのは困難です。
そのような建設業界の課題を解決する鍵として期待されているのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
国としても建設業界のDX推進を後押ししており、官民一体となって取り組む価値のあるものです。
前編では、「建設DXとは何か」「建設業界の課題」に関してご説明いたします。
DXをご検討中の建設業界の方は、ぜひ最下部のフォーム/お電話にてお問い合わせください。
建設業界におけるデジタル技術の導入と活用を通じて、業務プロセスの効率化、品質向上、コスト削減、新たなビジネスモデルの創出を目指す取り組みです。
建設計画や建設作業、点検作業などのあらゆる工程においてデジタル技術やAIを活用することで、建設業界全体の変革を図る考え方のことです。
作業効率が大幅に向上するだけではなく、建設現場における作業員のリスクも大幅に低減します。国土交通省などが主体となり、今や建設DXが急速に進行中です。
ただでさえ働き手が減っている建設業界に追い打ちをかけるのが、2024年に特例措置が終了する働き方改革関連法です。
この法律は時間外労働を1月あたり45時間に制限していますが、2019年の施行に対して2024年まで5年間の猶予期間が与えられていました。
2024年になると時間外労働可能な時間が減り、これまで以上に人手不足になると予想されています。
また、時間外労働時間が減ると労働者の収入が減るため、より高い収入を求めて建設業への従事者がほかの業界に流出する事態も起こるかもしれません。
2つ目の課題は人手不足、そして継承者不足です。
国土交通省によると1997年時点で685万人いた建設業界への従事者が、2020年には492万人にまで落ち込んでいます。
さらに働き手の高齢化も進んでおり、2020年において建設業界で働く人の36%が55歳以上なのに対し、29歳以下は12%しかいません。全産業の平均はそれぞれ31.1%/16.6%なのに比べると高齢化がより進んでいるといえます。
これにより単に人手不足が発生しているだけでなく、これまで培って来た技術が継承されず失われるリスクも存在しているのです。
労働者1人あたりの生産性の低さも長年の課題の1つです。
建設ハンドブック2021によると、2019年において建設業界の生産性は1人あたり2872.9円/時間でした。これは全産業の平均(5788.7円/時間)の半分以下の生産性です。
現場ごとに状況が異なるために標準化が難しい、手作業が多く自動化できないといった建設業界特有の原因が根底にありますが、少子高齢化社会を考えると生産性が向上しない限り人手不足の解消は難しいでしょう。
建物やインフラの3Dモデルをデジタルで作成し、設計から施工、維持管理までの情報を一元管理する技術。
メリットとして設計の精度向上、プロジェクト全体の可視化、効率的なコラボレーションが可能になる。
機器やセンサーをインターネットに接続し、データをリアルタイムで収集・管理する技術。
メリットとして建設現場の状況監視、設備の稼働状況管理、資材のトラッキングなど、リアルタイムでの情報共有と効率的な現場管理が実現する。
空撮による現場の監視、測量、進捗管理などに利用される無人航空機。
メリットとして高精度な測量データの取得、広範囲の監視、アクセス困難な場所の点検が容易になる。
データ分析や予測、最適化にAI技術を活用する。
メリットとして予測分析によるリスク管理、施工計画の最適化、品質管理の強化が可能になる。
現実環境にデジタル情報を重ねて表示する技術(AR)や、仮想環境を構築して体験できる技術(VR)。
メリットとして設計段階での視覚的な確認、トレーニングやシミュレーションの実施、現場作業の効率化が可能になる。
インターネットを通じてコンピューティングリソースを提供し、データの保存や処理を行う技術。
メリットとしてデータの共有とアクセスが容易になり、プロジェクト関係者間のコラボレーションが強化される。スケーラブルなリソース利用により、コスト効率が向上する。
RTK測位とはGPSの位置測定精度を向上させる技術です。衛星からの電波を利用する点はGPSと同じですが、固定局と移動局という2つの受信機を利用することで位置情報の誤差をわずか数センチメートルに抑えられます。
3Dプリンターを用いて建設部品や建築物そのものを造形する技術。
メリットとしてカスタマイズ可能な部品の製造、工期の短縮、コスト削減が可能になる。
ICT建機とは高度に情報化された建築機器のことであり、先述のRTK測位もそれを実現する技術の1つです。
掘削や切土、ブルドーザによる敷均しをオペレータなしにおこなえるようになるなど、効率化に寄与すると考えられています。
建設DXでは、BIM、IoT、ドローン、AI、AR/VR、クラウドコンピューティング、ロボティクス、3Dプリンティング、ビッグデータ分析など、さまざまな先進技術が導入されています。これらの技術の活用により、建設プロジェクトの効率化、品質向上、安全性の強化、コスト削減が実現され、建設業界全体の競争力が向上します。
・現場管理や設計業務の一部を自動化することで、作業時間を大幅に削減できます。
・IoTセンサーやクラウドシステムを活用して現場の状況をリアルタイムで把握し、迅速な意思決定を支援します。
・IoT技術を利用して資材の使用状況をリアルタイムで監視し、無駄を減らす。
・AIを用いてリソースの最適配分を行い、作業の重複や無駄を減少させる。
・BIM(Building Information Modeling)を活用して、設計から施工までの全工程を一元管理し、ミスを減少させる。
・データを活用して品質管理を強化し、不具合や欠陥を早期に発見・修正する。
・IoTやデジタルツイン技術を用いて資源の使用状況を最適化し、無駄を削減する。
・エネルギー使用状況を監視し、効率的なエネルギー管理を行うことで、環境負荷を軽減する。
・AIやデータ分析を用いて現場の危険要素を事前に予測し、安全対策を講じる。
・ドローンや監視カメラを利用して現場を監視し、事故の発生を防止する。
国土交通省が進める「i-Construction」では、ICTを活用して建設現場の生産性向上を図る取り組みが進められています。
これには、BIM/CIM(Building Information Modeling/Construction Information Modeling)の導入や、ドローンによる測量の活用などが含まれます。
効率化、品質向上、安全性の向上を目的とし、建設業界全体のデジタル化を推進しています。
国土交通省の研究機関である国土技術政策総合研究所は、建設DXに関する研究開発を支援しています。
新技術の開発や実証実験を通じて、建設業界のデジタル化を後押ししています。
国は建設業界のDXを推進するための人材育成プログラムを提供しています。
これには、大学や専門学校での教育プログラムの整備や、現場でのトレーニングプログラムの提供が含まれます。
DXに対応できるスキルを持つ技術者の育成を目指しています。
中小企業を対象に、DX導入にかかる費用の一部を補助する制度。建設業界においても、DX推進のためのシステム導入や設備更新に対して補助金が利用されています。
デジタル技術の導入を促進し、中小建設企業の競争力を強化します。
国土交通省は2022年に建設現場に監督職員が直接出向かず、Web通信を利用した「遠隔臨場」を直轄する土木工事で適用すると発表しました。
これにより現場への移動時間短縮や、立ち会いに伴う受注者の待ち時間短縮が期待されます。
建設業界におけるDX推進には、多くの課題がありますが、それらを克服するための解決策も存在します。
技術の導入と運用、データ管理とセキュリティ、業務プロセスの標準化、コミュニケーションの向上、規制と標準化の推進を通じて、建設業界の効率化、品質向上、安全性の向上が図られます。
これにより、持続可能な発展と競争力の強化が期待されます。
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