・事業所単位の抵触日は派遣先から通知される情報、個人単位は自社で計算する情報である。出どころが違う二つを同じ画面に並べる。
・管理台帳の記載漏れは、台帳を後から作るから起きる。契約と勤怠の入力の結果として台帳が埋まる順番にすると消える。
・事業所単位の期間を延ばすには、派遣先が抵触日の一か月前までに過半数労働組合等へ意見を聴く必要がある。逆算の起点はここになる。
・個人単位は同一の組織単位について三年が上限で延長できない。組織単位の変更や直接雇用、無期雇用への切替を早めに相談する。
・台帳・勤怠・請求・給与を同じデータでつなげると、記載漏れの確認が目視から仕組みへ移る。
1. よくある状態:抵触日が台帳の外にある
派遣元の管理画面を開くと、スタッフ台帳と案件の一覧はあります。稼働中の人数も分かります。ところが抵触日だけは別のExcelにある。派遣先の事業所ごとの抵触日は営業担当のファイル、個人単位の抵触日は労務担当のファイル。更新の時期になると、二つのファイルを突き合わせて確認します。この突き合わせを人の目で行っている会社が多いのが実情です。拠点が一つ、派遣先が十数社のうちは回ります。増えると、確認の作業が月末の固定業務になります。
管理台帳も似た状態になりやすいところです。契約を結び、就業が始まり、月末の締めが終わってから台帳を作る。契約書とメールと勤怠の画面を見ながら、記載事項を埋めていきます。急ぎの案件が重なると後回しになり、後回しになったものは記憶が薄れた状態で埋めることになります。記載漏れは、担当者の怠慢ではなく順番の問題です。台帳を最後に作る流れになっている限り、同じことが毎月起きます。
- 事業所単位の抵触日が営業のファイル、個人単位が労務のファイルにある
- 管理台帳を月末や調査の前にまとめて作っている
- 組織単位の名称が、契約書と台帳と現場の呼び方でそろっていない
- 勤怠の確定と請求の計算が別の画面で、突き合わせに時間がかかる
- 終わった案件の台帳を探すのに、フォルダをたどる必要がある
2. なぜ記載漏れが起きるのか
労働者派遣法では、派遣元と派遣先がそれぞれ管理台帳を作り、派遣労働者ごとに定められた事項を記載することが求められます。記載事項には、氏名、派遣先の名称、就業した事業所の名称と所在地、組織単位、業務の内容、派遣期間と就業した日、始業と終業の時刻、無期雇用か有期雇用か、六十歳以上であるかどうか、事業所単位と個人単位の抵触日、段階的かつ体系的な教育訓練を行った日時と内容、キャリアコンサルティングを行った日時と内容、苦情の処理の状況などが含まれます。保存期間は、労働者派遣が終了した日から三年間です。
この記載事項を並べてみると、情報の出どころが社内のあちこちにあることが分かります。氏名と雇用形態はスタッフ台帳、就業場所と組織単位は派遣先との契約、就業した日と時刻は勤怠、教育訓練は研修の記録、苦情の処理は営業の対応履歴。一枚の台帳を作るために五つの場所を見に行く構造になっています。だから後回しになり、後回しになると漏れます。担当者を増やしても、見に行く場所の数は変わりません。
抵触日も同じです。事業所単位の抵触日は、派遣先が派遣元へ通知する情報で、労働者派遣契約を結ぶ前に受け取るのが前提です。個人単位の抵触日は、同一の組織単位での就業開始日から三年で、派遣元が自分で計算できます。出どころが違う二つの日付を同じ画面で扱っていないと、どちらかが古いまま残ります。古いまま残った日付を見て契約を更新すると、後から直せない事態になります。
- 台帳の記載事項が、台帳・契約・勤怠・研修・営業履歴に分散している
- 事業所単位は派遣先からの通知、個人単位は自社で計算と出どころが違う
- 組織単位の捉え方が、契約書の表記と実際の配属で食い違う
- 保存は労働者派遣が終了した日から三年で、終わった案件も探せる必要がある
3. 今のやり方のままで今週できること
最初にやるのは、台帳の記載事項を項目表にすることです。法令が求める事項を縦に並べ、その右の列に「この項目はどこから取るか」を書きます。スタッフ台帳、契約書、勤怠、研修記録、営業の対応履歴。出どころを明示した表を一枚作るだけで、誰が何を埋めるかが決まります。埋める人が決まっていない項目が、毎回漏れている項目です。表を作ると、それが一目で分かります。
次に、契約を結ぶ前のチェックを定型にします。事業所単位の抵触日を派遣先から受け取ったか。その日付を契約書と台帳の両方に書いたか。この人の同一の組織単位での就業開始日はいつか。個人単位の抵触日が契約期間の途中に来ないか。この四点を契約前のチェック表にして、営業と労務の両方が同じ表を見ます。契約を結んだ後に気づくと、打てる手が大幅に減ります。
三つめは、更新の逆算表です。事業所単位の期間を延ばす場合、派遣先は抵触日の一か月前までに、その事業所の過半数労働組合等への意見聴取を行う必要があります。手続を行うのは派遣先ですが、派遣元が時期を把握していないと間に合いません。抵触日から逆算して、九十日前、六十日前、三十日前に何を誰へ伝えるかを表に書きます。ここまではExcelでもできます。
- 台帳の記載事項を縦に並べ、「どこから取るか」を右の列に書く
- 契約前に、抵触日の通知の受領と個人単位の到来予定を確認する表を作る
- 抵触日から逆算した九十日前・六十日前・三十日前の連絡予定を決める
- 組織単位の名称を、契約書と台帳と現場の呼び方でそろえる
- 作業の指示と指揮命令が誰から出ているかを、案件ごとに記録として残す
どんなものを作っているかをまとめました。
4. それでも限界が来る場面
表と逆算で回るのは、拠点と派遣先が少ないうちです。限界は三つの場面で来ます。一つめは、派遣先の事業所が増えたときです。事業所単位の抵触日は事業所ごとに別で、同じ会社の中でも拠点ごとに違います。拠点が数十になると、どの拠点がいつ満了するかを人の目で追えなくなります。更新の相談が重なる月は、確認だけで数日が溶けます。
二つめは、組織単位が動いたときです。個人単位の期間制限は同一の組織単位について三年で、延長はできません。組織単位が再編されたり、同じ人が別の課へ移ったりすると、起算日が変わります。この変更がExcelに反映されないまま契約を更新すると、期間制限を超えた受入になり、労働者派遣法の労働契約申込みみなし制度の対象になる場面があります。ここは後から直せない種類の抜けです。なお、無期雇用の派遣労働者や六十歳以上の方は、期間制限の対象外とされています。
三つめは、記録の種類が増えたときです。労働条件は労働基準法第十五条により労働契約を結ぶときに明示する必要があり、派遣法では就業条件の明示が別に求められます。キャリアアップのための教育訓練は有給かつ無償で実施し、その日時と内容を台帳に記載します。マージン率は事業所ごとに算定して公表します。契約の形が請負や準委任のときは、作業の指示と指揮命令が誰から出ているかを記録として残しておく必要があります。個別の適否の判断は社内の体制づくりと専門家の領域ですが、記録が無ければ説明のしようがありません。
- 派遣先の事業所が増え、拠点ごとの抵触日を目視で追えなくなる
- 組織単位の再編で個人単位の起算日が変わり、Excelが追いつかない
- 教育訓練の実施記録と台帳の記載がつながっていない
- 作業の指示と指揮命令の出どころが、記録として残っていない
- 事業報告書や公表用の集計を、そのたびに手で作り直している
5. 仕組みにするなら、何から始めるか
最初に作るのは、派遣先の組織の形です。派遣先の会社、その下の事業所、さらに下の組織単位。この三階層を台帳として持ちます。事業所には派遣先から通知された抵触日を、組織単位には配属されたスタッフの就業開始日を結びつけます。ここができていれば、事業所単位と個人単位の二つの抵触日は計算の結果として同じ画面に並びます。別のファイルを突き合わせる作業そのものがなくなるのが、この設計の効き目です。
次に、管理台帳を契約と勤怠から組み立てます。契約を登録した時点で、就業場所、組織単位、業務の内容、派遣期間、抵触日が台帳の行に入る。勤怠を確定した時点で、就業した日と始業終業の時刻が入る。研修を登録した時点で、教育訓練の日時と内容が入る。台帳を「作る」のではなく、日々の入力の結果として「埋まる」形にします。未入力の項目が台帳の画面に残るようにしておけば、漏れが調査の前ではなくその日に見つかります。
その後に、勤怠から請求と給与までをつなげます。月額の単価と精算の方式が契約に入っていれば、確定した稼働時間から請求額を計算できます。時間外や深夜、法定休日の時間は給与側の計算に回ります。派遣労働者の時間外労働には派遣元の三六協定が適用されるため、月の途中の稼働ペースから着地を見られるようにしておくと、上限に近づく前に派遣先の指揮命令者へ相談できます。稼働と請求が同じデータから出るようになると、締めの突き合わせも短くなります。
当社は人材・派遣・SESの事業者向けに、この順番で台帳と抵触日、勤怠、請求までをつなぐ業務システムを作っています。法令上の適否そのものを機械が判定するのではなく、判断に必要な記録と期日がそろっている状態を作ることが目的です。
- 派遣先を会社・事業所・組織単位の三階層で持つ
- 抵触日は事業所と組織単位に結びつけ、二つを同じ画面に並べる
- 管理台帳は契約・勤怠・研修の入力から自動で埋まる形にする
- 未入力の記載事項を台帳の画面に残し、その日に気づける状態にする
- 勤怠の確定から請求と給与の計算まで、同じデータでつなげる
- 終了した案件の台帳も、三年間は検索できる形で残す
6. まとめ:抵触日を契約の内側に置く
抵触日の管理は、注意して覚えておく仕事ではありません。派遣先の組織の形を台帳として持ち、そこに日付を結びつける設計の仕事です。管理台帳の記載漏れも同じで、台帳を後から作る順番をやめれば構造的に減ります。契約を登録したら台帳の行が立ち上がり、勤怠を確定したら時刻が入る。この順番にすると、埋まっていない項目がその日のうちに見えます。
今週できることは、台帳の記載事項の出どころを一枚の表にすることと、契約前のチェックを定型にすることです。拠点と派遣先が増えて目視が追いつかなくなったときが、仕組みへ移す時期です。人材・派遣・SESの業務システムについては、業種ページで抵触日の管理と管理台帳の作り方をまとめています。
よくある質問
抵触日は誰が決めて、誰が通知するのですか
事業所単位の抵触日は、その派遣先の事業所が派遣労働者を受け入れられる期間の満了日の翌日で、派遣先が派遣元へ通知します。通知は労働者派遣契約を結ぶ前に受け取るのが前提です。個人単位の抵触日は、同一の組織単位での就業開始日から三年で、派遣元が計算します。二つは別の日付なので、両方を台帳に持つ必要があります。
事業所単位の期間を延ばすには何が必要ですか
派遣先が、抵触日の一か月前までに、その事業所の過半数労働組合等へ意見を聴く必要があります。手続を行うのは派遣先ですが、時期が迫っていることを派遣元が把握していないと間に合いません。抵触日から逆算した連絡の予定を台帳側に持ち、九十日前など早い段階から派遣先と話を始めておくのが実務的です。
個人単位の三年が来る前に何を準備しますか
個人単位の期間制限は同一の組織単位について三年で、延長はできません。組織単位を変える、派遣先が直接雇用する、無期雇用派遣へ切り替える、別の派遣先を紹介するといった選択肢を、到来の数か月前から本人と派遣先に相談します。無期雇用の派遣労働者や六十歳以上の方は、期間制限の対象外とされています。
管理台帳はどこまでシステムで埋められますか
氏名や雇用形態はスタッフ台帳、就業場所と組織単位と業務の内容は契約、就業した日と始業終業の時刻は勤怠、教育訓練の日時と内容は研修の記録から入ります。記載事項の多くは、日々の入力の結果として埋められます。保存は労働者派遣が終了した日から三年間必要なので、終わった案件も検索できる形にしておきます。
請負や準委任の案件では何を記録に残しますか
契約の形がどうであれ、作業の指示と指揮命令が誰から出ているかを記録に残すことが出発点です。作業報告の提出先、指示を出した人、打ち合わせの参加者を案件ごとに残します。個別の適否の判断は社内の体制づくりと専門家の領域なので、システムの役割は、判断の材料となる記録を欠けなく残すことに置きます。
まずは30分お話を伺います。
