3月決算の会社にとって、10月は下期のスタートです。上期を振り返り、「売上は計画どおりだったのか」「利益が思ったより残っていないのはなぜか」と感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。その答えを毎月つかむための仕組みが予実管理(予算と実績の比較)です。本記事では「中小企業 予実管理 やり方」「予実管理表 エクセル」で調べている経営者・経理担当者に向けて、専任の経理部門がなくても回せる、現実的な始め方を整理します。
・予実管理は「予算を立てる→実績を集める→差異を読む→打ち手を決める」を毎月回す仕組み
・最初は売上・粗利・固定費・営業利益の4項目、月次・部門別でなく全社1枚から始めてよい
・予算は「願望」ではなく、客数×単価などの分解と前年実績をもとに立てる
・差異は金額と理由をセットで記録し、翌月の行動まで決めて初めて意味がある
・月次の数字が翌月10日前後に出る体制づくりが成否を分ける
※会計処理・税務の取り扱いは、顧問税理士や国税庁など公式情報で最新をご確認ください。
1. 予実管理とは?中小企業にこそ必要な理由
予実管理とは、期首に立てた予算(計画値)と、毎月の実績値を並べて比べ、ずれ(差異)の原因を確かめて手を打つ管理手法です。決算書が「1年の成績表」だとすれば、予実管理は毎月の健康診断にあたります。
中小企業では、決算が締まってから初めて「今期は利益が出ていなかった」と分かるケースが少なくありません。1年後に分かっても打てる手は限られますが、月次で差異に気づければ、値上げ・経費の見直し・営業の重点先の変更などを期中に実行できます。決算書の基本的な見方は決算書の読み方 超入門で解説していますので、あわせてご覧ください。
- 利益の着地が早く見える:期末を待たずに、今期の着地見込みを経営判断に使える
- 資金繰りの先読みができる:損益の予実と資金繰り表をつなげることで、資金不足を早めに察知できる
- 金融機関への説明力が上がる:計画と実績、差異の理由を説明できる会社は、対話がしやすくなる
- 社員が数字を自分ごと化する:部門や担当ごとの目標と実績が見えると、行動が変わりやすい
2. 下期予算の立て方——「願望」ではなく「分解」で考える
予実管理が続かない原因の多くは、予算そのものにあります。「前年比120%」のように根拠のない数字を置くと、毎月未達が続き、誰も表を見なくなります。予算は売上を要素に分解して積み上げるのが基本です。
前年同月を確認
などに分解
反映して配分
- 売上の分解例:既存顧客の売上+新規顧客の件数×平均単価、店舗なら客数×客単価
- 粗利:商品・サービス別の原価率を上期実績から置く。仕入価格の上昇が見込まれる場合はその分も反映する
- 固定費:人件費・家賃・リース料などは確度が高いので、先に確定させる。最低賃金の改定や賃上げ予定も織り込む
- 月別の配分:年間予算を12等分せず、繁忙期・閑散期や賞与月など季節性を反映する
下期から始める場合は、残り6か月分だけで構いません。完璧な年間予算を作ろうとして着手が遅れるより、まず半年回して精度を上げるほうが確実です。
3. Excelでつくる予実管理表——最初は1枚でいい
専用システムを入れなくても、予実管理はExcelやスプレッドシートで十分始められます。大切なのは項目を増やしすぎないことです。最初は次の列を持つ全社1枚の表から始めましょう。
- 行(項目):売上高/売上原価/粗利(売上総利益)/販管費(人件費・その他)/営業利益
- 列(比較):当月予算/当月実績/差異(実績−予算)/達成率/累計予算/累計実績
- 備考欄:差異が大きい項目について「なぜずれたか」を一言で記入
運用が定着してきたら、部門別・商品別・得意先別へと段階的に細かくしていきます。会計ソフトから試算表をエクスポートし、実績欄に貼り付けるだけで更新できる形にしておくと、担当者の負担が大きく下がります。
4. 差異分析の見方——「いくらずれたか」より「なぜずれたか」
差異を見るときは、金額の大きい順に3つまでに絞って原因を確認します。すべてを追いかけると会議が長くなるだけで、行動につながりません。
- 売上の差異:客数(件数)と単価のどちらがずれたのかを分けて見る。対策がまったく異なるため
- 粗利率の差異:値引き、仕入価格の上昇、商品構成の変化のどれが原因かを確認する
- 経費の差異:一時的なもの(修繕・採用費など)か、今後も続くものかを区別する
原因が分かったら、「誰が・何を・いつまでに」を決めます。例えば単価の下落なら値上げや価格表の見直し、件数不足なら営業活動量や既存顧客の深耕といった具合です。価格面の打ち手は値上げ・価格転嫁の進め方が参考になります。
5. 月次決算を早めることが、予実管理の生命線
予実管理は、実績が出るのが遅いと機能しません。前月の数字が翌々月に出てくるようでは、差異に気づいたときにはもう次の月が終わりかけています。目安として、翌月の10日前後には前月の試算表が見られる体制を目指しましょう。
- 請求書・領収書の回収ルール:締め日と提出期限を社内で明確にし、月末に書類が溜まらないようにする
- 概算でよい項目は概算で:金額の小さい経費は、確定を待たずに見込みで計上し、後で調整する
- 顧問税理士との役割分担:記帳を任せている場合は、月次の締めスケジュールをあらかじめ共有しておく
- デジタル化・自動化:銀行明細やクレジットカードの連携、請求書の電子受領などで入力作業を減らす。電子保存のルールは電子帳簿保存法の対応チェックもご確認ください
当社の導入事例でも、税理士法人のお客様が TRUST FORGE(AIシステム開発)で月次決算・書類作成などをAIで自動化し、月次工数を40%削減しています。経理の手作業を減らすことは、そのまま予実管理のスピードに直結します。
6. 数字を行動に変える月次会議の回し方
予実管理表は、作って終わりでは意味がありません。毎月決まった日に30〜60分の月次会議を設け、次の流れで進めるのがおすすめです。
- ① 結果の確認(10分):当月・累計の達成率と、着地見込みを共有する
- ② 差異の原因(15分):大きな差異3つについて、担当者が理由を説明する
- ③ 打ち手の決定(15分):翌月の行動を「誰が・何を・いつまでに」で決める
- ④ 前回の宿題の確認(5分):先月決めた行動が実行されたかを振り返る
このとき、生成AIを使えば、試算表のデータから差異の要約や会議資料のたたき台を短時間で作れます。議事録の作成もAIに任せれば、決定事項の抜け漏れも防げます(詳しくはClaudeによる議事録自動化)。ただし、AIの出力は必ず元の数字と照合し、判断は人が行うことが前提です。
7. まとめ——予実管理は「続く仕組み」にしてこそ効く
予実管理の目的は、きれいな表を作ることではなく、毎月の数字から次の一手を決め続けることです。最初は全社1枚・4項目で構いません。下期のスタートに合わせて予算を分解して立て、月次決算を早め、月次会議で行動を決める——このサイクルを半年回すだけでも、経営の見え方は大きく変わります。
資金面の先読みまでつなげたい方は資金繰り表の作り方もあわせてご覧ください。業績の悪化や資金繰りに不安がある場合は、認定経営革新等支援機関と一緒に計画を作る早期経営改善計画 策定支援も選択肢です。TRUSTEP JAPAN は顧問・社外取締役コンサルティングとして、経営者の右腕の立場で会議体の整備・数値管理・実行支援まで月次で伴走しています。なお、本記事は一般的な考え方の解説です。会計処理や税務の個別判断は、顧問税理士や国税庁など公式情報で最新をご確認ください。
