「決算が終わってから、思っていたより利益が出ていて納税資金が足りなかった」「逆に赤字になり、金融機関への説明に困った」「節税のつもりで買った設備で、手元のお金が減ってしまった」——決算をめぐる経営者の後悔の多くは、決算日を過ぎてから数字を知ることから生まれます。12月決算の会社であれば、いまがちょうど決算の2か月前。3月決算の会社も、下期の数字から着地を読み始める時期です。本記事では「中小企業 決算前 やること」「決算 着地見込み」「納税資金 準備」で調べている方に向けて、決算2〜3か月前から経営者が押さえておきたい準備の進め方を整理します。
・決算でできる手の多くは決算日の前にしか打てない。決算の2〜3か月前に準備を始めるのが目安
・最初にやるのは「着地見込み(決算予測)」の作成。直近の試算表に残り月の見込みを足して、売上・利益の着地を出す
・着地が見えたら納税資金・賞与資金・借入返済をまとめて資金繰りに反映し、不足があれば早めに手を打つ
・帳簿は売掛金・在庫・未払い・仮払金などを点検し、実態とずれた数字を残さない
・節税は「キャッシュが残るか」「本当に必要な支出か」で判断する。税金を減らすためだけの支出はお金を減らすだけになりやすい
・税務の個別判断は顧問税理士と相談し、制度の最新は国税庁など公式情報で確認する
1. なぜ「決算前」の準備が大切なのか
決算書は、1年間の経営の成績表です。そして決算日を過ぎると、その年度の数字はほとんど動かせなくなります。決算前に準備をしておくと、次のようなメリットがあります。
- 納税の金額と時期が事前に分かる:法人税などの申告・納付は、原則として決算日から2か月以内です(申告期限の延長などの特例もあります)。利益が出る年ほど、納税資金を前もって確保しておく必要があります。
- 打てる手の選択肢が増える:決算賞与の検討、必要な設備投資の時期の判断、不要な在庫や不良債権の整理などは、決算日の前でなければ実行できません。
- 金融機関への説明がしやすくなる:決算書は融資の審査でも重視されます。着地が赤字になりそうな場合も、早めに分かれば原因と改善策を準備したうえで説明できます。
決算書そのものの読み方に不安がある方は、決算書の読み方 超入門もあわせてご覧ください。
2. まず「着地見込み(決算予測)」を作る
決算前の準備の出発点は、今期がどのくらいの売上・利益で終わりそうかをつかむことです。難しく考える必要はなく、次の3つを足し合わせるだけで着地見込みが作れます。
試算表の累計
残り月の予測
費用・損失
- 実績:顧問税理士や経理担当から、直近月までの試算表を受け取ります。月次の締めが遅れている場合は、まず締めを急ぐことが先決です。
- 残り月の見込み:受注残や商談の状況、季節要因をもとに、売上と主な経費を月ごとに見積もります。昨年同月の数字を参考にすると、予測が大きく外れにくくなります。
- 決算時の調整:減価償却費、賞与、在庫の評価損、回収できない売掛金の処理など、決算でまとめて計上される項目を見込んでおきます。
着地見込みは一度作って終わりではなく、毎月の試算表が出るたびに更新すると精度が上がります。予算と実績を毎月比べる仕組みがまだない場合は、中小企業の予実管理の始め方で紹介している月次の数字の整え方が、そのまま決算予測の土台になります。
3. 納税資金・賞与資金を資金繰りに反映する
着地見込みで利益の水準が見えたら、決算後に出ていくお金を資金繰り表に書き込みます。利益が出ていても、手元のお金が足りなくなることは珍しくありません。
- 税金の納付:法人税・地方税・消費税など、決算後にまとまって納める税金の概算を顧問税理士に試算してもらいます。中間納付をしている場合は、その分を差し引いた額を確認します。
- 賞与・決算賞与:冬の賞与や、利益に応じて支給を検討する決算賞与の資金を見込みます。社員への還元は、人材の定着にもつながる大切な判断です。
- 借入の返済と設備の支払い:毎月の返済に加え、決算前後に予定している大きな支払いを並べます。
資金が不足しそうな場合は、決算前のうちに金融機関へ相談しておくのが安全です。決算後に赤字や資金不足が判明してから相談するより、事前に見通しと対策を示したほうが話を進めやすくなります。資金繰り表の作り方は資金繰り表の作り方で詳しく解説しています。
4. 決算前に点検しておきたい帳簿のチェックリスト
決算書の数字が実態とずれていると、正しい経営判断ができないだけでなく、金融機関からの評価にも影響します。決算前に、次の項目を経理担当や顧問税理士と確認しておきましょう。
- 売掛金:長期間入金のない取引先はないか。回収の見込みが低いものは、早めに督促や対応方針を決めます。
- 在庫:帳簿上の在庫と実際の在庫が一致しているか。売れる見込みのない在庫が積み上がっていないかを、棚卸しで確認します。
- 未払い・前払い:決算月までに発生した費用の計上漏れがないか、翌期分の支払いが今期の費用に混ざっていないかを確認します。
- 仮払金・貸付金:役員や社員への仮払い、使途の不明な残高が残っていないか。内容が説明できない勘定は、金融機関からも注目されやすい項目です。
- 固定資産:すでに使っていない設備や、廃棄した備品が帳簿に残っていないかを確認します。
5. 節税は「キャッシュが残るか」で判断する
決算前になると「何か経費を使って税金を減らしたい」という相談が増えます。しかし、税金を減らすためだけの支出は、多くの場合、手元のお金を減らす結果になります。たとえば100万円の不要な支出で税金が一部減っても、差し引きではお金が出ていく形になるからです。判断の目安は次のとおりです。
- 本当に事業に必要な支出か:来期に予定していた設備更新や修繕、研修などを前倒しするのは合理的な場合がありますが、不要な購入は避けます。
- 資金繰りに無理がないか:支出によって納税や賞与、返済の資金が不足しないかを、資金繰り表で確認します。
- 使える制度を確認したか:中小企業向けには、賃上げや設備投資に関する税制上の優遇措置などが用意されています。要件や適用期限は年度ごとに変わるため、顧問税理士への確認と公式情報のチェックが欠かせません。賃上げに関する制度は賃上げ促進税制のガイドも参考にしてください。
- 利益を見せたい年ではないか:近く融資や補助金の申請を予定している場合、利益を過度に圧縮すると決算書の評価が下がることがあります。目先の税金だけでなく、来期以降の資金調達も含めて判断します。
6. 決算の数字を「来期の計画」につなげる
決算前の準備は、税金や資金のためだけではありません。着地見込みで見えた「計画と実績のずれ」は、来期の経営計画を作るための最も確かな材料になります。売上が伸びなかった理由、利益を圧迫した費用、想定より好調だった事業を整理し、来期の目標と行動計画に反映させましょう。
業績の悪化や資金繰りの不安が見えてきた場合は、早い段階で経営改善の計画を立てることが重要です。TRUSTEP JAPANの導入事例では、医療法人のお客様が早期経営改善計画 策定支援で収益構造を可視化し、営業利益率2倍、借入条件の改善につなげています。認定経営革新等支援機関として、金融機関との調整や、補助金を活用した計画策定費用の軽減まで一貫してご支援しています。
7. TRUSTEP JAPANの経営・数値管理支援
TRUSTEP JAPANは、認定経営革新等支援機関として400社超の経営支援を行ってきました。顧問・社外取締役コンサルティングでは、経営者の右腕の立場で会議体の整備や数値管理、実行支援までを月次で伴走しています。決算の着地を毎月確認し、打ち手を決める仕組みづくりからご相談いただけます。なお、税務申告や個別の税務判断は、顧問税理士と連携して進めることを前提としています。
8. まとめ——決算は「締める前」に準備した会社が強い
中小企業の決算前にやることは、着地見込みを作り、納税・賞与・返済の資金を資金繰りに反映し、帳簿を点検し、キャッシュが残るかで節税を判断することです。いずれも決算日を過ぎてからでは手遅れになりやすく、2〜3か月前から始めることで選択肢が大きく広がります。
「今期がどのくらいで着地しそうか分からない」「決算後の資金繰りが心配」という段階からでも構いません。お気軽に無料相談をご利用ください。なお、本記事は一般的な考え方の解説です。税額の計算や会計処理、税制の適用可否などの個別判断は顧問税理士にご相談いただき、制度の最新は国税庁など公式情報でご確認ください。
